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日本の生ハム(製造と販売) ~ その3 ~

日本のスーパーマーケットでは、
ドイツタイプの生ハム(ラックスハム)が
販売されているケースがほとんどですが、
一部のスーパーマーケットでは
イタリア産パルマハムが店頭販売されています。

店頭販売されているのは、
プリ・スライスパックと呼ばれる
イタリア現地でスライスパックものがほとんどで、
原木の対面スライス販売は少ないようです。

プリ・スライスパックとは、
パルマハム協会Consorzio del Prosciutto di Parmaの
公式サイトを参照すると、

・・・パルマハム生産地域内の認定工場にて
 スライス加工・包装されたパルマハムの正規加工品で、
 左上に黒い三角形と王冠マークのロゴ、
 及び PROSCIUTTO DI PARMA の名称が記されています。
 これらの正規品以外のスライス商品にロゴをつけたり、
 パルマハムと称して販売することは禁じられています。・・・

となっています。

日本の生ハム(製造と販売) ~ その2 ~

日本で生ハムと言えば、
ドイツタイプの生ハム(ラックスシンケン、ローシュナイダーシンケン)のことで、
スーパーマーケットのハム・ソーセージ売場で売られている
生ハムはこのタイプがほとんどです。

日本ハム・ソーセージ工業組合の公式サイトに掲載されている
「年次別食肉加工品生産数量」を参照すると、
ラックスハムの2007年の生産量は約5,900トンです。

ラックスシンケンとローシュナイダーシンケンは、
「ハム・ソーセージ図鑑」(財団法人伊藤記念財団発行)に
次のように解説されています。

① ラックスシンケンLachsschinken
 ・特 徴 : 豚ロース肉で作られる半乾燥食肉製品で、
   「ラックス」とはドイツ語で鮭を意味する。
   非常にマイルドでスモークサーモンのような
   色調があることからこの名前がある。
   日本人の好みに合い、昔から有名である。
   強めに燻煙したきれいな黄金色の製品もある。
 ・原材料 : 豚ロース肉、豚脂肪、食塩、発色剤
 ・製 法 : できるだけ脂肪を除去した豚ロース肉を
   ブラインに4~6日間浸漬後、
   薄切りにした豚脂や大腸薄膜・セロハンなどで包み、
   糸で巻き付け、4~6時間冷燻する。

② ローシュナイダーシンケンRohschneidershcinken
 ・特 徴 : 生ハムの総称で、直訳するとスライスした生ハムとなる。
   ドイツの至る所で燻製生ハムがあるが、
   北ドイツのヴェストファーレン地方のものと
   南ドイツのシュヴァルツヴァルトのものが特に有名である。
   骨付きのものは柔らかく、風味に富み、ジューシーである。
 ・原材料 : 豚もも肉、食塩、発色剤、砂糖、香辛料
 ・製 法 : 塩漬して熟成後乾燥する。
   乾塩法、湿塩法およびそれらの併用による塩漬法があり、
   塩漬期間は通常20日前後、塩漬後風乾もしくは冷燻する。


日本の生ハム(製造と販売) ~ その1 ~

「食品大百科事典」(朝倉書店)を参照すると、
日本の食肉加工の歴史が本格化したのは
明治時代に入ってからだそうです。

同書によると、
1872年(明治5年)に長崎で片岡伊右門が
アメリカ人のベンスニーにハムの製法を習ったのを皮切りに、
1876年に東京農業試験場およびイギリス人ウィリアム・カーチスが
鎌倉の地でハムの製造を開始したそうです。

そして、第一次世界大戦時に捕虜となった
ドイツ人技術者が戦後日本にとどまり、
ドイツ製法を広めようとしたそうです。


食品大百科事典

食品大百科事典

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 朝倉書店
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 大型本



世界の生ハム ~(その2)スペイン・フランス・ベルギーの生ハム~

スペインには、ハモンセラーノの他、
日本でも人気のハモンイベリコという生ハムがあります。

フランス南西部大西洋岸のバスク地方の中心都市バイヨンヌに、
ジャンボン・ド・バイヨンヌ Jambon de Bayonne という生ハムがあります。

また、南西部のオート=ピレネー県のビゴール豚を使った
ジャンボン・ノワール・ド・ビゴール Jambon Noir de Bigorre という
生ハムが日本に輸入されています。

ベルギーのゲント市周辺にガンダハム Ganda Ham という生ハムがあります。

ガンダハムの製法(豚モモと海塩しか使わない)は、
パルマハムの製法に似ているそうです。

ガンダハムは2007年に開催された
フーデックスジャパンに出展されました。

世界の生ハム ~(その1)イタリアの生ハム~

イタリアには、パルマハム、サンダニエーレ・ハム、モデナハムなどの
生ハム(プロシュット・クルード Prosciutto Crudo)がありますが、
イタリアを代表する生ハムといえば、
パルマハム Prosciutto di Parma です。

パルマハムは世界中に輸出されています。

パルマハム協会が公表している「2007年パルマハム輸出実績」を参照すると、
2007年の輸出は対前年比+9.2%の約208.5万本(約12,980トン)で、
イタリア産熟成食肉製品(スペック、コッパ、クラテッロを含む)
総輸出額の約37%を占めたそうです。

パルマハムは、歴史のある生ハムです。

パルマハム協会の公式サイトを参照すると、
紀元前5世紀、エトルリア時代のポー川流域において、
イタリア各地やギリシャと、
塩漬けの豚モモ肉の交易が行われていたことが史実として残っているそうです。

パルマハムは、ドルチェと呼ばれることがあるそうです。

「イタリア 味の原点を求めて」(バートン・アンダーソン著、白水社)に
次の記載があります。

・・・引用・・・
 パルマ産プロシュットはドルチェ(甘口または柔らかいの意味)と呼ばれており、
 イタリアの他地域で生産される、
 塩味や風味の尖ったものや堅いハムと、区別される。
 
 この甘さは適度な塩加減のたまものだが、
 また、上手な管理のもとで狙いどおり酵母が活動し、
 タンパク質が変化した結果でもある。

 すなわち、熟成の最終段階でおこる発酵作用によって、
 風味がなごみ、食感が和らぐのである。

 塩そのものは保存料ではないが、
 純化を促す働きをし、有害な微生物が悪さをしないうちに、
 水分とともに肉から排出させる。

 最終熟成のプロセスで、肉が無類の風味とアロマと触感をおびれば、
 色調もまた、おぞましい灰色がかった茶色から、
 熟成した明るいバラ色へと変わってゆく。

 こういう生化学的な過程をきちんと踏むと、
 肉は浄化されて病菌をいっさい寄せつけない。
・・・引用終わり・・・

さて、パルマハムの製造販売においては近年、
商業主義の傾向が強くなり、
長い歴史に培われたパルマハムは今、
パルマハム職人による伝承の技から
機械化による大量生産へとシフトが進んでおり、
パルマハムがすべてドルチェという時代ではなくなったそうです。


イタリア 味の原点を求めて (至高の食材)

イタリア 味の原点を求めて (至高の食材)

  • 作者: バートン アンダーソン
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 1997/12
  • メディア: 単行本



「生ハム」とは? (法令による)

次に、一般的に「生ハム」と呼ばれている
非加熱食肉製品が食品衛生法とJAS法で
どのように規定されているかを調べてみました。

●食品衛生法による分類 (参照:「食品大百科事典」朝倉書店発行)
 食肉製品は加熱条件で次の4つに分類されています。

①非加熱食肉製品
 中心部温度を63℃30分加熱する方法
 またはこれと同等な方法で加熱を行っていない製品。
※非加熱食肉製品はさらに亜硝酸Naの使用、肉の形状、
  水分活性などにより分類されています。

②特定加熱食肉製品
 中心部温度を63℃30分の加熱
 または同等の効力で加熱殺菌した製品 (10℃以下保存)。

③乾燥食肉製品
 50℃以上でまたは20℃以下で
 水分活性0.87未満まで乾燥させた製品 (常温保存可)。

④加熱食肉製品
 中心部を63度30分加熱した製品で
 乾燥、特定加熱、非加熱製品以外 (10℃以下保存)
 →加熱後包装または包装後加熱。

●JAS法による分類 (参照:農林水産省ホームページ)
 JAS法は、酒類を除くすべての食品の表示を義務付けています。

 非加熱食肉製品という用語はJAS法では用いられていませんが、
 「ハム」の表示を規制しているのは
 「加工食品品質表示基準」と個別基準の「ハム類品質表示基準」で、
 「ハム類品質表示基準」は、
 「ハム」を次の6つに分類して品質基準を定めています。

 ① 骨付きハム (定義は省略)
 ② ボンレスハム (定義は省略)
 ③ ロースハム (定義は省略)
 ④ ショルダーハム (定義は省略)
 ⑤ ベリーハム (定義は省略)
 ⑥ ラックスハム 
   (定義)次に掲げるものをいう。
   1 豚の肩肉、ロース肉又はもも肉を整形し、塩漬し、ケーシング等で包装
     した後、低温でくん煙し、又はくん煙しないで乾燥したもの
   2 1をブロック、スライス又はその他の形状に切断したもの

「生ハム」とは? (一般語として)

最初に、〔生〕、〔ハム〕、そして〔生ハム〕の意味を
「大辞林 第三版」(小学館)と
「広辞苑 第六版」(岩波書店)で調べてみました。

【生(なま)】
●大辞林
火を通していないこと。煮たり焼いたりしていないこと。
「―の野菜」、「―で食べる」

●広辞苑
動植物を採取したままで、煮たり、焼いたり、乾かしたりしないもの。
また、その状態。「肉を―で食べる」

【ハム(ham)】
●大辞林
豚肉を硝石などをとかした食塩水に漬け込み、薫製にした食品。
もも肉の骨付きハムが本来のものであるが、
ほかにボンレス‐ハム・ロース‐ハム・プレス‐ハムなどの種類がある。

●広辞苑
肉を塩漬けにし、また燻製にした保存食品。
本来は豚の骨付腿肉だが、その他の部分も使う。
ボンレス・ハム、ロース・ハム、プレス・ハムなど。

【生ハム(なまハム)】
●大辞林
燻煙したあと水煮をしないハム。

●広辞苑
塩漬にした豚のもも肉を乾燥させながら熟成させた、
加熱していないハム。

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